で白熱する議論を教員と展開しています。2020年度には博士課程プログラムも開設し、次世代の公衆衛生学研究者の育成が進められています。そしてこれら取組が学内で評価され、概算要求として予算がつき、2022年度より公衆衛生学領域5分野が増設されることとなり、公衆衛生学の広い領域で研究を展開し、今後更に国際競争力を高め、発展していくことが期待されています。 さて、東京医科歯科大学MPHプログラムの初期の成功は、事業戦略、マーケティング戦略という視点に立つと、いったいどんな風に見えるでしょう? そのためには、ビジネスモデルというフレームワークを用いると理解しやすいですので、まずはビジネスモデルについて解説します。ビジネスモデルとは、商品やサービスなどの付加価値の提供と、それを通した収益獲得の仕組みを体系(モデル)化したものであり、誰に(ターゲット)、どんな価値を(バリュー)、どうやって提供し(ケイパビリティ)、どうやって収益を得るのか(収益モデル)の4つの要素からなります。長期的に利益を生み出し成長していくビジネスを展開するためには、4つの要素のどれか一つでも欠けてはいけないし、4要素が緊密に結びついている必要があります。修士課程プログラムの話にいきなりビジネスモデルという概念が紹介され違和感を感じている読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、修士課程プログラムにも、提供する価値(バリュー)と、その対象(ターゲット)、価値を生み出す方法(ケイパビリティ)が必ずなくてはならないですし、大きな収益獲得を目指すものではないとしても、少なくとも持続可能な収支バランスを達成(収益モデル)する必要はあります。つまり、修士課程プログラムも、教育研究機関における立派なビジネスの一つなのです。 それでは、ターゲット、バリュー、ケイパビリティ、収益モデルのそれぞれについて、東京医科歯科大学MPHプログラムではどうでしたでしょうか? 1.1.1 ターゲット 事業者が提供する付加価値に対して対価を支払い商品を購入またはサービスを利用する顧客がターゲットです。SGU採択後、東京医科歯科大学MPHプログラムでは、主たるターゲットを「国際機関等でのキャリア構築を考えている応募者」に絞りました。また、経済的余裕の有無や、履修に際しての離職可能性(特に医療系の学士課程を卒業して医療職につきながら公衆衛生を学びたいという応募者が多い)によらず、優秀な応募者をターゲットに含めることとしました。
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