国際競争力のある修士課程プログラムを創るための指南書
14/73

東京医科歯科大学MPHプログラムの収益モデルの特徴として、英米トップ研究者を常勤で雇える予算がない中、彼らを非常勤講師として雇用して履修者が彼らとネットワークを形成できる機会を提供したり、宣伝活動において、プログラムウェブサイトおよびFacebookなどの、費用のあまりかからない、いわゆるOwned mediaに集中することなどで、効果を大幅に落とすことなくコスト削減を実現した点などが挙げられるでしょう。 ここまで、東京医科歯科大学MPHプログラムのビジネスモデルの4要素、ターゲット、バリュー、ケイパビリティ、収益モデルを見てきました。それぞれの要素が独立して存在するのではなく、お互いに緊密に結びついていることがよくわかると思います。ターゲットが最も必要とするバリューを提供し、バリューを提供するために必要で、しかも持続・発展可能な収益モデルに基づくケイパビリティを備えています。だからこそ開設後初期の成功とその後の発展が実現できたのでしょう。 1.1.5 基本戦略しかしながら、ビジネスモデルの4要素が揃い、緊密に結びついているからといって、必ずしも競争に勝てるわけではなく、競合相手に対して優位に立つために、どのように事業を方向付けるのか、という「戦略」が極めて重要です。ハーバードビジネススクール教授のマイケル・ポーターは、ターゲット(対象市場)とバリュー(競争優位の源泉)の2軸を用い、ポジショニング型の基本戦略フレームワークを提示しました(図1.1)(参考文献2)。

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る