国際競争力のある修士課程プログラムを創るための指南書
18/73

• 基本戦略(戦略3類型)• ビジネスモデル4要素(ターゲット、バリュー、ケイパビリティ、収益モデル)• マーケティング戦略(特にプロモーション)前述(1.1.6)のように、戦略やビジネスモデルはその組織/事業におけるビジョンやミッションに沿うものでなくてはなりません。早稲田大学には創設者である大隈重信が提言した、「世界に貢献する」というグローバル化を強く意識した教育理念(理念とは、ビジョンやミッションなどを包括する上位概念)があり、それが90年代以降アジアを軸にしたものへと発展します。早稲田大学アジア太平洋研究科(Graduate School of Asia-Pacific Studies:以下、GSAPSと略)はその理念「アジア太平洋地域における知の共創」のもとに1998年に早稲田大学初めての学部を持たない独立大学院として生まれました(Appendices A.1/A.2.4)。それ故に、当初から完全なバイリンガルプログラム(英語のみ、もしくは日本語のみで修了できる)であり、教員はほぼ全員が外国で教育を受けたことがあるか外国籍となっています。結果として、学生は中国を始めとしたアジア系の留学生が中核であり、ビジョンに沿ったものになっています。ただこういった高いバリューやケイパビリティを構築できたのは、その理念の明確さゆえでしょう。前述(1.1.5)のように、ポーターの戦略3類型は、ターゲットとして全体戦略か集中戦略か、そしてバリューとして低価格(コスト)か高付加価値(差別化)かを明確にすることでした。ターゲットについて、何をもって「全体」とするかは市場の定義次第ですが、東京医科歯科大学MPHプログラムにおいては当初は市場全体(公衆衛生学修士課程の応募を考えている者全体)を対象としていました。また、早稲田大学大学院経営管理研究科経営管理修士課程(Waseda Business School:以下、WBSと略)も現在は市場全体(ビジネススクールへの応募を考えている者全体)を対象とし、英語・日本語、フルタイム・パートタイム、日本人・外国人、ジュニア・シニアの全てに対応するプログラムを用意(フル・ポートフォリオ)しています(Appendices A.1/A.2.5)。しかしながら、今回調査した他のほとんどのプログラムは、対象市場をかなり絞り込んだ集中戦略をとっています。東京農工大学国際イノベーション農学コース(International Innovative 1.2.1 ビジョン・ミッション1.2.2 基本戦略(戦略3類型)

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る