1.2.4 収益モデル東京農工大学では、世界トップレベルの稲作技術の研究が行われてきており(ケイパビリティ)、それら技術を学べる(バリュー)国際修士課程プログラムであるIIASを開設しました。開設後は必然的に、米食文化圏である東南アジアや、米食が広がりつつあるアフリカからの応募者へと、ターゲットが絞られていきました(Appendices A.1/A.2.2)。体育やスポーツ科学の体系的な研究が行われてきた(ケイパビリティ)筑波大学では、それらを学べる(バリュー)国際修士課程プログラムであるTIASを開設しました。開設後、体育教育を体系的に導入したい、またオリンピックのための選手強化にむけてスポーツ科学を学びたいと考えるアフリカ諸国や開発途上国へと、ターゲットが絞られていきました。また、それらバリューは、現役を退き次のキャリアを目指す元アスリートにも大変意義があるということで、そのような応募者も集まってきているそうです(Appendix A.1)。筑波大学生命環境科学研究科環境科学専攻/持続環境学持続性科学技術政策SUSTEP(Sus-tainability Science, Technology, and Policy Program)プログラム(以下、SUSTEPと略)も、提供するバリューによりターゲットが自ずと絞られていった例の一つです。もともと環境科学研究が行われていた(ケイパビリティ)ところに、科学技術振興機構の戦略的環境リーダー育成拠点形成事業の募集があり、既存ケイパビリティを活かして環境科学の教育/研究を学ぶ機会(バリュー)を提供する大学院プログラムを唄い応募し採択され、開設されました。環境問題が深刻化しつつあるなか、環境科学の教育/研究を学ぶ機会はニーズが高く、特に開発途上国の行政官に自ずとターゲットが絞られていきました(Appendix A.1)。ただ、全ての場合でケイパビリティ → バリュー → ターゲットという順で構築されたビジネスモデルが成功するかというと、そうではないかもしれません。なぜなら、今回の調査結果にはサンプリングバイアスがかかっている可能性があるからです。今回の調査対象は、SGU採択校における国際修士課程プログラムの中で、応募者獲得にある程度成功しているもの(応募者のうち日本国外の学士課程を修了した者の数が募集定員の50%以上)が中心だからです。今回調査させていただいた10プログラムのうち4つが、SGUなどの省庁補助金事業として開設されました。その場合、補助金事業期間中はゆとりのある収入が見込めますが、事業終了後の自走化における収入(財源)確保が大きな課題となります(3.2.6で詳しく説明します)。
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