筑波大学SUSTEPでは、入学者の1/3が独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:以下、JICAと略)による人材育成奨学計画(The Project for Human Resource Development Scholarship:以下、JDSと略)(参考文献4)の対象者です。このJDSとは、開発途上国などの若手行政官等を日本の大学院に留学生として受け入れるというもので、授業料などの学生負担金をJICAが負担し、学生に奨学金が支給され、さらに受入機関に対して教育支援経費が支払われます。SUSTEPは補助金事業として開設されましたが、事業期間終了後の財源確保/収益安定化に、この教育支援経費が非常に重要な役割を果たしているそうです(Appendix A.1)。私立大学にとっては、授業料を主とした学生からの納付金が重要な財源の一つです。従って、人気のあるプログラムであれば、授業料の値上げによる収入増は収益安定化のための有効な方法になります。しかし、今回調査させていただいたプログラムのほとんどが、アジアやアフリカ諸国からの留学生をターゲットとしており、大幅な授業料値上げは応募者を遠ざけ、定員割れにより結果的に収入を減らしてしまいかねません。国際大学(International University of Japan)は学部を持たない大学院大学であり、開発途上国からの留学生を主たるターゲットとしていることを鑑みますと、高めの授業料が設定されてきました。それでも履修生を確保できている背景には、そもそも「JICAなど公的機関による授業料負担や奨学金支給を受ける留学生が履修する」というビジネスモデルであるからです。そしてそれを可能にしているのがJICAなどの公的機関との関係(ケイパビリティ)であり、その関係は1980年代の同大学設立時まで遡ります(Appendix A.1)。早稲田大学WBSは、前述したように英語・日本語、フルタイム・パートタイム、日本人・外国人の全ての応募者に対応する複数の修士課程プログラム(ディグリー・プログラム)を運営する他に、企業役員を対象とするエグゼクティブ・プログラムなどのノンディグリー・プログラムも多数運営しています。そして、ディグリー・プログラムの授業料を値上げしない代わりにノンディグリー・プログラムの授業料を高めに設定し、そこであげた収益により、研究科全体の収益の安定化を図っています。ビジネススクールらしく市場原理を利用した収益安定化戦略であり、国内外を問わず他の多くの大学の経営管理研究科でそのような収益モデルが採用されているそうです(Appendices A.1/A.2.5)。
元のページ ../index.html#21