【就学費用や生活費用の支援】 日本の国際修士課程プログラムの標的となる応募者セグメントとして、開発途上国からの学生が主となる場合が多いと思われます。日本の国公立機関の学費や物価は欧米のそれらと比較し安価ですが、それでも開発途上国からの学生にとっては大きな障壁です。他方、大きな利益はもたらさないとしても、学生納付金からの一定レベルの収入はプログラムの存続のために必要です。【教職員からの抵抗を乗り越え、組織文化を醸成するための鍵】 国際修士課程プログラムの新規立ち上げに際しては、英語で授業や研究指導を行うことについて教員からの抵抗や、英語で教務的支援を行うことについて事務職員からの抵抗が必至です。う。しかし補助金額は年々減額されますし、期間も限定されています。もし教員人件費をそれら外部財源に依存する形をとると、事業終了によりプログラムが存続の危機を迎えてしまいます。あらかじめ事業終了後の財源が確保されていないのであれば、教員人件費は外部財源に依存しないのが賢明です。今回インタビューした多くのプログラムにおいてそのギャップを埋めているのが、出身国政府や日本政府、JICAなどによる奨学金であり、これらは実は重要な生命線となっています。これらを積極的に活用するべきですが、今後のプログラム維持可能性がそれら機関の方針変更などに左右されうるなど、両刃の剣であることも認識しておきましょう。そんな中、プログラムを成功に導くのは、世界中から応募してくる優秀な学生達の学習に対する熱意と、それに応えてあげたいという教職員の熱意であり、その原動力となるのはリーダー(機関執行部や、プログラム責任者)が描き共有する明確で魅力的なビジョンと、そのビジョン実現のために自身がロールモデルとなり発揮するリーダーシップです。プログラムを成功させるには、リーダーにその覚悟が必要です。
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