国際競争力のある修士課程プログラムを創るための指南書
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東京農工大学は、ASEAN諸国を中心とした政府主導の国際的学士課程学生交流事業であるAIMSプログラム(正式名称ASEAN International Mobility for Students Programme)の大学リストに掲載される日本の7大学の1つであり、加盟校間単位互換制度事業や、1〜2セメスターの短期交換留学事業等に参加することにより、「東京農工大学」の認知度が高まった。② 個別の教員がもっている各地域の大学とのパイプそれぞれの教員が個別にパイプを持っており、現地の教員に直接アプローチをかけ、学士課程第2〜3学年生をAIMSプログラムのスキームを活用して東京農工大に呼び寄せている。地道な活動としてかなりのプロモーション効果があり、各地域の大学国際課窓口に名前が知られるようになった。その結果、学士課程第2〜3学年時にAIMSプログラムを通して東京農工大学で学んだ学生が大学院生として戻ってくるようになった。中央アジアからはウズベキスタンの学生が来ている。ウズベキスタンを担当している教員は、大使館経由で「東京農工大学」の名前を広めている。アフリカへのアウトリーチは、JICAを通して行っている。JICAのAgri-netプログラムやSDGsプログラムに登録することで、JICAがプロモーションし、学生が応募してくれているという流れである。ガーナはガーナ大学との強いパイプを持った教員が担当しており、ガーナ大学を中心にアウトリーチしている。③ 卒業生による紹介卒業生による紹介で、エジプトやケニアの学生が数年に一度入学している。3. 戦略策定プロセス競合分析競合校は、九州大学や東京大学であるが、留学生の数が募集を上回っており、そこまで競い合うことはない。ただ、どの大学も東南アジアの農学系大学と強いつながりをもっており、そういった地域の優秀な学生の獲得を競い合っている。また、インドネシア、マレーシア、タイなどでも、日本や欧米の大学院を卒業した学生が自国に戻って教員になっており、自前で研究者を育てられるようになった。しかし、いまだに自国大学院よりも日本の大学院で博士もしくは修士を取ることの付加価値が高く、入学希望者数は減っていない。その他、国費留学生の優先配置枠での競合がある。東京農工大学では、東南アジアを地域選択している為、東南アジアの留学生を50%以上採らなければならない。そのため、同じように優先配置枠として東南アジアを選択している大学が競合相手になる。4. 進行管理4-1. 管理体制職員大学レベルでの二言語化が遅れており、事務組織全体としての英語での対応力はまだ低い。IIASコース専任事務職員として、英語が堪能な非常勤職員が1名いるが、非常勤の為に複雑な仕事を頼むことはできない。国際化が進むにつれ事務作業も増えてくる為、正規職員の雇用について、要望は出しているが、実現していない。学生支援入学や成績管理など学務関係の処理は、農学部教務係にて正規職員が対応するが、英語対応は難しく、学生と職員間で意思疎通が図れない場合、教員が仲介役として呼び出されることもある。コミュニケーション教員と事務職員とで定期的な会合はないが、農学部は規模が大きくない為(教員数:150名程度、職員数:50〜60名程度)、教員と職員間でのコミュニケーションは図れている。4-2. 個別問題対処変革への抵抗設立当初は、英語授業に非協力的な教員や、教育より研究に力を入れ、あまり強力してくれない教員がいた。日本的な解決方法ではあるが、非協力的な教員が退職するまで待つという方法でこの問題を乗り越えた。そのため、解決に至るまで10年以上の時間を要し、それまでは各教員が個人プレーで動いていた。組織的に動けるようになったのはここ10年で、(1)他大学

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