国際競争力のある修士課程プログラムを創るための指南書
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 早稲田大学では、職員の権限・責任が大きい。教員だけでなく、職員も大きな権限・責任をもつことが職員の活躍に繋がっているのではないかと考えている。早稲田大学の中でも教職協働が進んでいる。意思決定はルールに基づいて、教授会や、研究科だと研究科運営委員会で決められるが、意思決定に至るまでのプロセスにおいて、職員サイドでないと気づけないようなことは職員側が積極的に発信している。教員学生指導の負荷は高いが、学士課程学生がいないため全教員が大学院教育に集中できる。教員による科学研究費の申請率が100%を超えており、早稲田大学内でもこのような文系研究科は他にない。これは、研究者として活躍している教員がGSAPSに多いということを反映している。アジア太平洋研究科における研究・教育環境の中で自己実現できている教員は多いと考える。職員質とキャリアパス常に優秀で意欲の高い職員が配属・採用できており、研究科所属職員のほとんどが英語対応可能でかつ事業運営能力が高い。その原因は、①職員への権限委譲(大きな権限・責任をもつことが職員の積極的発言/活躍/教職協働に繋がっている、②キャリア機会(職員でも常任理事になれる)、③研究科の枠を超えた人事異動(英語対応可能な職員は国際部や留学センター、海外事務所、国際教養学部、アジア太平洋研究科など英語対応が必要となる部署を回ることが多い)、などにある。コミュニケーションアジア太平洋研究科は教員も職員も全員当該研究科に所属しており、研究科直属の事務所が存在するため、研究科の運営推進や発展のために何をするかということを専門で考える事務体制ができている。そのため、教員と職員の連携が非常に図りやすい。また、かつてアジア太平洋研究科で働いていた職員のOB・OGが国際部等に何人もいるため、本部と協力してプロジェクトを進めていく上でも連携が非常に取りやすい。財源確保外部資金を積極的に獲得し、事業拡大を図ってきた。4-2. 個別問題対処自走化当初から、外部資金に依存しない体制作りを目指した。一番自走化が大変だったのは「大学の世界展開力強化事業」が終了したときである。アジアの4大学と共に様々なイベントを実施していたので、どのように継続していくか悩んだ。しかし、財源がなくなったときにどう対処するか考えながら作ったため、外部資金で人件費は支出せず既存人材を活用する形で対応し、終了後もそこまで問題にはならなかった。サマースクールやウィンタースクールでも、各大学が積極的に財源を獲得してきたので、そういった財源を活用して継続できる環境づくりができた。その他日本人応募者が少ない点が課題である。アジアでは文系修士学位の価値が高い一方、日本では高くないことも要因の1つである。

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