2022年度第2回目(通算66回目)となるFind-Your-Role-Model Sessionでは、本学医学部医学科をご卒業され、現在コーネル大学医学部小児循環器科の助教・小児非侵襲心臓イメージングのディレクターでいらっしゃる佐々木奈央先生、並びにコーネル大学医学部小児集中治療科の助教・小児循環器集中治療のディレクターでいらっしゃる佐々木潤先生のご夫妻をゲストとしてお招きしました。

佐々木奈央先生は2003年に本学卒業後、１年間の横須賀米海軍病院でのインターンシップを経て渡米、アルバートアインシュタイン大学ヤコビ医療センターで3年間の小児科研修を、そして2007年よりさらに３年間の小児循環器の専門研修をマウントサイナイ医科大学アイカーン校にて修了されました。佐々木潤先生は2005年に本学卒業後、同様に横須賀米海軍病院を経て2006年に渡米され、ロングアイランド大学病院およびエルムハースト病院センターにて4年間の小児科研修を修了されました。その後お二人はマイアミに移られ、佐々木奈央先生はマイアミ大学およびニクラウス小児病院循環器科スタッフとしてご活躍され、佐々木潤先生はマイアミ小児病院で小児集中治療・小児循環器集中治療の専門研修を終えた後、ニクラウス小児病院循環器集中治療科スタッフとしてご活躍されました。そして、2021年6月よりお二人でコーネル大学に移られ、さらに今年の8月からはボストン小児病院に移られ、ハーバード大学教員として、佐々木奈央先生は循環器画像診断指導医、佐々木潤先生は循環器集中治療指導医としてご活躍される予定となっています。

お二方には米国でのキャリアについて、勤務先病院転籍の際の苦悩や転籍のタイミングを合わせる上での準備等について色々お話しいただき、自分の望むキャリアを形成する上ではさまざまなコネクションや情報を収集すること、特に共働きであるお二人にとっては入念に将来のプランを話し合うことが大切であると教えていただきました。具体例としてマイアミ時代に奈央先生がマイアミ大学病院からニクラウス小児病院に移動された時のエピソードを紹介していただきましたが、その際にフロリダの法律の関係で奈央先生は18ヶ月間、移動先のニクラウス小児病院でスタッフとして就労することができなかったそうです。しかし、その間に学んだ小児心臓MRIの専門性が、のちのコーネル大学やボストン小児病院への栄転機会に繋がり、まさにピンチがチャンスになった瞬間であったとおっしゃっていました。

お二人にはさらにアメリカで医師として働きながら子育てをする際の両立の難しさ、そしてアメリカにおける女性医師の立場についてお話しいただきました。アメリカでは子育ては夫婦二人で行うものだというスタンダードがある一方で、出産・育児に対する制度は整っておらず、出産の際も6週間しか休みはもらえないとのことでした。両立については仕事もある中では難しく、最終的にはバランスを考えるのではなく、どちらも頑張る姿勢が大事とのことでした。佐々木奈央先生はアメリカにおける女性医師の立場について問題提起する形で紹介してくださり、アメリカでは同じ条件や立場で働いた場合でも女性は男性の85%しか賃金をもらえないことなど、地域や施設によっては医療従事者間でも女性への差別が存在していることをお教えくださいました。

佐々木潤先生はアメリカでの生活全般について、多様性があり、家族と過ごす時間は (特に研修を終えスタッフ (attending physician) としてのポジションを得てからは) たくさん作ることができるとおっしゃっていました。一方で、就労やキャリア形成の段階で何が起こるかわからない、潤先生自身もマイアミで研修をすると思っていなかった、とおっしゃられ、なるべく早い段階から話し合い・準備をすることが大事とのことでした。最後に今後の展望については奈央先生から、自分達にとってボストン小児病院は、稀なものも含め多彩な疾患をもつ症例が集まる世界一の施設と思える病院であり、今後の全キャリアをここで過ごすつもりで8月からの仕事に望みたい、とのお言葉をいただきました。

本学をご卒業され米国で活躍されるお二人の輝かしい経歴と苦難、そして今現在も向上心を持って医学に臨む姿を直接伺うことのできる貴重な機会でした。多くの本学学生をはじめとした視聴者にとって、何かに挑戦をする上で勇気づけられるようなFind-Your-Role-Model Sessionとなりました。